2017年6月7日水曜日

大山女坂七不思議+α


七不思議の価値について


大山登山道には男坂と女坂があって、その女坂の方に七不思議というものがあります。大山の観光業に携わる地元の方々が整備した、登り道を行く観光客へのせめてもの気休めといった感じで、観光客である私が言うのも失礼ですが、大して興味の惹くものでもありません。しかしふと、幕末の日本にやって来たスイス人のエメェ・アンベールの話を思い出しました。日本滞在時における彼の見聞録(『エメェ・アンベールが見た鎌倉』)に、鶴岡八幡宮にある政子石(姫石とも)と呼ばれる奇石を案内人がわざわざアンベールに見せている様子が記されています。

柵で囲った大きな石があったが、彼(案内人)は、この石にある婦人の性器に似た形をしている亀裂を指差して、この亀裂が自然に出来たものであることを主張した。

このように、特別な形状をした石は、当時では庶民の礼拝を勝ち取るアイテムの一つとして重宝されていたことがうかがえます。つまり、大山女坂にある七不思議も、いつの時代からとまでは言えないものの、意外と古くから信仰や礼拝の対象であった可能性が考えられます。ということは、現代人の我々が七不思議を見て興味を示そうが示さなかろうが、そんなことは関係なく、古くから信仰や礼拝の対象であったかもしれないこれら七不思議とは、つまり歴史そのものであり遺構であり遺跡であると言っても間違いではないでしょう。

鶴岡八幡宮旗上弁財天にある政子石(姫石)

ということで、現代人の感覚ではツッコミどころ満載の七不思議を目の当たりにして、「くだらない」とか「そんな訳ない」と本気のツッコミをしてそれで終わってしまうかもしれませんが、そうではなく、礼拝・信仰されてきたかもしれない遺構・遺跡であるという観点から、これら七不思議を見ると、また違った感じ方ができるのではないかと思います。さらに今回は大山登山中にあったものも含め、七不思議にプラスαといった感じで記事をまとめてみました。


弘法の水


大山の女坂を進んだ序盤、まだまだ体力のあるところに、七不思議一つ目の”弘法の水”が現れます。「弘法大師が岩に杖を突いたら、その跡から清水がこんこんと湧き出たという。夏でも枯れることがなく、いつでも水の量が変わらないという。」(大山観光青年専業者研究会より、以下青専研)

弘法の水

弘法大師が水を掘り当てたという伝承は鎌倉の今泉にもありましたね。なんて霊験あらたかな湧き水なのだろうと神妙に近寄ると、水道管から水が”ちょろちょろ”と出ていました・・・・。イヤイヤイヤ何があっても本気でツっこんじゃいけないと誓ったじゃないかと自分をなだめました。


子育て地蔵


”弘法の水”からすぐ近くにあるのが七不思議二つ目の”子育て地蔵”。「最初は普通のお地蔵様として安置されたが何時の頃からか顔が童に変わっていた。」(青専研より)

顔が変わったという恐怖の子育て地蔵

なんとミステリアスな・・、そんなことが起きるのかと背筋が凍りかけたところに、「あれっ?ナニコレ?」と子育て地蔵の奥にあるスペースにもう一体の地蔵を発見しました。

ん?どなた?

雰囲気的にこちらもいかにも”子育て地蔵”といった感じです。ここで思ったのが、顔が変わったという子育て地蔵とは、顔じゃなくて地蔵自体を変えたんじゃないかという疑惑が浮かび上がりました。つまりこちらが旧子育て地蔵ではないでしょうか。変わったというか、地蔵自体を変えたんじゃないでしょうか・・。


爪切り地蔵


こちらも”子育て地蔵”からすぐ近くにある七不思議の三つ目”爪切り地蔵”です。「弘法大師様が道具を使わず、一夜のうちに手の爪で彫刻されたと伝えられている。何事も一心に集中努力すれば実現できるとの教えである。」(青専研より)

爪切り地蔵

あれほど本気でツッコんではいけないと誓いながら「いくら弘法大師さまでも爪でこんなモノ作れる訳ねぇし、一夜とか絶対無理」とか「本当に弘法大師さまが作ったものならこんな雨ざらしの所においてある訳はねぇ」とか「百歩譲って弘法大師さまじゃなくともそんな時代からある石像仏なら今頃お寺か神社が大事に管理して金とって人に見せるだろ」とか色んなツッコミが頭の中を駆け巡りましたが、言葉にするのを堪えました。


逆さ菩提樹


”爪切り地蔵”から階段を登り前不動の直前にあるのが七不思議四つ目の”逆さ菩提樹”です。「上が太くて下が細く逆さに生えたように見えることから逆さ菩提樹という。」(青専研より)

逆さ菩提樹

上が太くて下が細い木が見当たらないのでどれを指しているのかと迷ってしまいますが、よ~く案内板を見ると「現在は二代目である」とあったので、そんな形状の木は現在ではないのかもしれません。「結局ないのかよっ!」と、今のところツッコミどころ満載の七不思議に、本気でツッコんではいけないと決めた自分との約束が守れるか心配になってきました。


無明橋


”逆さ菩提樹”から前不動・大山寺を経たところにあるのが次なる七不思議五つ目の”無明橋”です。「話をしながら通ると、橋から下に落ちたり、忘れ物や落とし物をしたり、悪い事が起きたりすると云う。」(青専研より)

無明橋

橋から落ちたり、何かを落としてしまった人がいたからこのような伝承があるのでしょうか、それとも何かを暗喩しているのでしょうか、思わず深読みしてしまいます。こちらは考え込んでしまうと、ちょっと怖い感じです。


潮音洞


”無明橋”のすぐ近くにあります。七不思議六つ目の”潮音洞”です。「洞に近づいて心を鎮め耳を澄ませると遠い潮騒が聞こえるという。」(青専研より)とあります。「マジで?」と潮音洞に頭を突っ込んでみたところ、・・やっぱり何も聞こえません。わざわざ頭を突っ込んだ自分が恥ずかしい・・。とここで思ったのが、これは、潮騒の音が聞こえる訳ないとわかっていながら好奇心から安易に頭を突っ込む人、つまり普段から軽率に行動してしまうような人に「世の中そんな面白い話ねぇよ」と戒めるためのものではないかと思いました。んんっ~深いです。

潮音洞

ちなみに序盤にあった”弘法の水”の近くに石造物の欠片が落ちていました。「~洞」と読めます。一昔前の潮音洞を案内する石造物なのかもしれません。

一昔前の潮音洞の案内版?


眼形石


”潮音洞”から階段の勾配が急になります。その先にあるのが七不思議の七つ目”眼形石”です。「眼の形をしたこの石に手を触れて祈れば、不思議に眼の病が治ると言い伝えられている。」(青専研より)

目形石

最後の七つ目で比較的まともなモノが現れましたが、この眼形石に乗せられている小さな石に注目してください(下画像)。何か文字が彫ってありますが、読めますか?、読めませんよね。ということで、ネットで調べてみたところ、面白い論文が落ちていました。コチラ(注:PDF)。若干ネガティブな評価をするので、誰々さんの何々という紹介を避けさせていただきます。こちらの論文によると、この文字は、中国の甲骨文字系統とインドのアショカ王に関係するアヒルクサ文字にエジプトの象形文字が混在しているとのことで、また上の段に父なる太陽「ラー」の神が刻印され、下の段にはシュメールの大地母神「キ」と牡牛神「ハル」を表す甲骨文字が彫られているとありました。

石に刻まれた謎の文字

「ナニその夢のある話」と興味深く見てしまいましたが、いわゆる世間一般ではトンデモ系に分類されるモノですね。もちろんそうであったら何て面白いんだろうと思いますが、納得できるだけの証拠と論拠に欠けます。でも応援してます。ということで、個人的な見解です。石切り職人さんの文字をこれまで見てきた限りでは、どうやら彼らは独自の文字を使用するようなので、これも一種の石切り職人文字かと思われます。石の中央に刻まれた文字、「阿」という字に似てません?。たぶん何かの都合で石切り職人さんが「阿夫利神社がなんたら」と刻んだのではないかと個人的には思いました。


番外編 牡丹岩


”眼形石”で七不思議は全てですが、阿夫利神社下社から本社に向かう登山道中にこれまた七不思議に似たものがあったので紹介します。こちら下画像は”牡丹岩”と呼ばれるもので、「足元などに見られる球体の岩のこと。牡丹の花のように見えるところからその名が付いた。」とありました。三崎の海外町で見たスランプ構造と呼ばれる地層と似ているような気がしました。

牡丹岩


番外編 天狗の鼻突き岩


牡丹岩からさらに登った先にあるのが”天狗の鼻突き岩”です。経験したこともない過酷な大山登山の道のりに「もうそれどころじゃないから・・」と思いながらも一応写真を撮ったという涙ぐましい一枚です。

天狗の鼻突き岩

「石段左側にある、拳が入るくらいの穴のこと。これは天狗が鼻を突いて開けた穴だと云われている。」とありました。たかがこれだけの形状に対し、天狗が鼻で突いたと表現する想像力が凄いと思います。でもこれも政子石と一緒ですよね、自然に出来た形状だからこそ一目置かれてきたのでしょう。ということでいかがだったでしょうか。本気でツッコんだりしないと誓ったにも関わらず、結局のところ、ツッコミどころ満載の七不思議にツッコまずにはいられませんでした。但し、上でも述べたように、これらが古くから信仰・礼拝の対象であったかもしれないと考えると、見方や感じ方、そして価値も変わってくると思います。




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記事作成  2017年6月7日

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