2013年12月15日日曜日

百八やぐら


百八やぐら群概要


二階堂平子から杉ヶ谷にかけたエリアに150基以上のやぐらが存在します。これら百八やぐら群と呼称されています。山腹にある5~6段のひな壇状地形に各一列に配列しています。その異様ともいえる光景に「別世界に来た感」を誰もが感じることでしょう。『鎌倉市史 考古編』には「鎌倉のやぐら群中最も優れたものを含みかつ各様の施設をみることが出来る代表的やぐら群である。」とあります。やぐらとは簡単に言うと中世のお墓です。

Google Map 天園ハイキングコース
白線はハイキングコース ①建長寺半僧坊 ②建長寺回春院 ③十王岩 ④朱だるぎやぐら群 ⑤百八やぐら群 ⑥天園 ⑦覚園寺ヶ谷 ⑧西御門

上地図画像の⑤の辺りに百八やぐら群が存在します。百八やぐら群の下、もしくは覚園寺ヶ谷の右隣に住宅があるのが確認できると思いますが、その辺りを西ヶ谷と云います。往時では別当坊僧坊域だったと推測されています。周辺には覚園寺及び覚園寺塔頭や頼朝の祈祷寺であった永福寺などいくつもの寺院が密集していました。百八やぐら群はこれら寺院に関連したものとも考えられますが、詳しいことはわかっていないようです。細かい位置情報などは最下部にあるグーグルマップでマーカーにて印してあるので、詳細を知りたい方はそちらで確認してください。


天園ハイキングコース沿いにある百八やぐら群は覚園寺ヶ谷(地図画像⑦)から行くのが最も近いと思われます。そしてこちら下画像はハイキングコース位置から容易に見渡せることのできるエリアのやぐら群です。百八やぐら群の上段にあたります。前述したとおり、やぐらがずらっ~と並んでいます。


やぐら内に安置された地蔵のほとんどが鎌倉でよく見かける首の欠けた地蔵になってしまっています。近世もしくは近現代に設置された弘法大師像です。


こちらのやぐらはお地蔵さんとその前面に納骨に使用したと思われる大きな穴が施されています。このような場合、誰々のやぐらというより合葬のためのやぐらと考えられるようです。短期間に多くの人が亡くなったことによる造作なのかもしれません。ちなみに中央のお地蔵さんも首を獲られたようです。近くで見るとわかるのですが現在のは新しく備え付けられたようです。


こちらは五輪塔浮彫されたやぐら。なんかキレイですね。



ひな壇状地形を下った下段に行くと他では見られない形態のやぐらがいくつもあります。こちらは内壁一面に五輪塔浮彫されています。とてもスタイリッシュな美しさです。側面にも彫られているのがわかるでしょうか。


そしてこちらは内壁一面に梵字(サンスクリット語)と地蔵立像浮彫が施されています。「遺跡感」が半端ないです。どうやらこのやぐらは納骨などの葬送目的ではなく祈祷などの目的で造営された仏殿タイプのものと考えられます。


そしてこの五輪塔浮彫されたやぐらですが、なんと成人男性の平均身長を超える大きさです。もの凄い迫力です。大五輪塔やぐらとでも呼びましょうか。

五輪塔浮彫の下に置いたリュックからその大きさが伝わると思います

こちらは低壇が三段も施された豪華ひな壇やぐら。往時では五輪塔などの石塔が所狭しと並んでいたのでしょうね。


そして少し場所を移動した辺りにあるやぐらです。こちらも地蔵五輪塔梵字浮彫されていますが上画像のものとはテイストが違いますね。


百八やぐら群も律宗が関与か


永仁四年(1296)に建立された覚園寺の開山には忍性の弟子で智海心慧(ちかいしんえ)が抜擢されています。ということはなんとこの二階堂エリアも律宗極楽寺グループが関わっているようです。ただ逆に、これら百八やぐら群の見事な石工技術も忍性が西国から連れて来たと云われる大蔵組一派によるものと考えれば納得のような気がします。それにしても鎌倉時代は律宗が本当に盛んだったんですね。

そして前述したように150基以上あるのでとてもじゃありませんが紹介しきれません。その他にも多くの個性的なやぐらがあります。

五輪塔が浮彫されたもの
梵字の浮彫と奥室が施されたもの
中世のものと思われる石塔が多く安置されたもの

百八やぐら群と覚園寺


覚園寺は北条義時が健保六年(1218)に建立した大倉薬師堂を前身とします。永仁四年(1296)に北条貞時元寇からの脅威を避ける願いを込め覚園寺と改名・再興しています。南北朝時代は後醍醐天皇の勅願所で、また足利氏の祈願所ともなっています。これら覚園寺裏山位置に展開するやぐら群が覚園寺に関するものであれば、百八やぐら群は国難を避けるための祈願と元弘の乱で亡くなった戦死者の魂を鎮魂するための施設だったのかもしれません。梵字と地蔵立像が内壁一面に浮彫されたあのやぐらで一体どんな儀式が行われていたのでしょう。


より大きな地図で 百八やぐら群 を表示

カテゴリー 探索記事(エリア別 二階堂・天園
記事作成  2013年12月15日

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